「スカウティング」誌1999年5月号からの引用
ボーイスカウト大阪連盟の宮崎正章さん収録

ご存じですか?
スカウト活動に必要な保険

現代人の活動においては、あらゆる場面で事故の可能性を否定することはできません。もちろん未然に防ぐための細心の努力を冬くすことはいうまでもありませんが、万が一の場合を想定し、できる限りの対応をするための備えが、保険です。保険をかけたからといって事故がなくなるわけでも、当事者の責任が軽くなるわけでもありませんが、だからといって保険不要論をとなえることは感心しません。
ボーイスカウト活動についても例外ではありません。楽しいはずの野外活動の最中に、いつ子どもたちの生命にかかわるような事故が発生するかわかりません。現実に、いくつかの悲しい事例が報告されています。
指導者は、あらゆる状況を想定して十分な安全対策を講ずる必要がありますが、当然、事故が発生した場合の備えとして、「保険」の加入を考えなければなりません。
ボーイスカウトの活動に必要な保険としては、「賠償責任保険」と「傷害保険」とがあります。それぞれの保険の内容について整理してお伝えします。

●賠償責任保険

日本連盟が、登録料から保険料を納入し、一括加入しています。活動中の事故で、指導者に責任があった場合に支払われる保険です。ただし、
(1)スカウトがケガをしても、法律上の損害賠償責任が発生しなければ、この保険の対象となりません。
(2)対象は対人だけです。物を破損させた場合の対物傷害賠償責任保険には加入していません。
(3)自動車事故にかかわる損害賠償は、対人であっても対象外です。
保険金額は、1名 7,000万円限度/1事故 5億円限度。ただし、1事故についての免責金額(主催者負担額)は1万円までです。また、指導者の過失の割合等により、上記金額の限度までは支払われないことがあります。

●傷害保険

各団がそれぞれの判断で加入することが必要で、日本連盟としての一括加入はしていません。ただし、一部の県連盟では、県連盟として一括加入しているところもあります。
傷害保険の中でも代表的な「スポーツ安全保険」と「スカウト傷害保険」について、その内容を比較検討してみましょう。
スポーツ安全保険で有利な点は、死亡保険金が2,000万円であるということに加え、「対人賠償責任保険」「対物賠償責任保険」も含まれているということがあげられます。これは、前述のボーイスカウト日本連盟が一括加入している賠償責任保険の限度額に上積みされるものです。
ボーイスカウト傷害保険で有利な点は、加入時に名簿提出が義務づけられていないこと等があげられます。
この他、社会福祉協議会が扱っているボランティア保険もあります。各団において、資料に基づき内容を比較検討、県連盟にも相談していただき、有利な保険に加入されることをおすすめいたします。スポーツ安全保険についてのお問い合わせは、財団法人スポーツ安全協会(電話03−3481−2431)または、各県体育協会等の中にある同協会の支部まで。
ボーイスカウト保険については、毎年大東京火災海上保険株式会社またはその代理店から、契約している団宛に資料が送付されているとのことです。

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ボーイスカウト賠償責任保険のあらまし

「ボーイスカウト賠償責任保険」とは、ボーイスカウト活動中に、スカウトまたはスカウト以外の第三者が、事故により死亡、または負傷した際に、日本連盟、県連盟、地区組識、団、並びに指導者等の主催者側が、法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を保険金として支払うものです。
「ボーイスカウト活動中」とは、原則としてスカウトがボーイスカウトの制服を着用して、加盟組織の管理下での、右の活動および行事に参加している間をいいます。
※「加盟組織の管理下」とは、上記活動および行事に参加するため、指定された集合地に集合したときから、解散地において解敏するまでの問で、指導者が引率している場合をいいます。

(1)運動会、ハイキング、キャンプ等の「スポーツ活動」

(2)音楽会、親睦会、レクリエーション等の「文化活動」

(3)防火、防災等への協力活動、清掃活動等の「社会奉仕活動」

(4)学習活動、生産活動、会合、大会等の「その他の活動」

(5)上記(1)〜(4)の企画立案、作業等の「付随活動」

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賠償責任保険 そなえよつねに

●知っておきたい保険の知識

では、ここで指導者並びに保護者の皆さんにぜひ知っておいていただきたい保険についての基礎知識を日本連盟が−括加入している賠償責任保険を例にご案内します。いくつかの用語についても、これを機会に覚えてください。

【被保検者】

保険金を受け取る人と考えてください。ボーイスカウトの賠償責任保険の場合、活動の主催者となります。ここでいう主催者とは、主催団体ならびに同役員、および行事計画書に記載した指導者を指します。その行事・催事の責任者と理解してください。

【担保内容】

ボーイスカウト活動中に、主催者の過失によって事故が発生し、活動に参加している者、またはその他の第三者が負傷あるいは死亡し、主催者が法律上の賠償責任を負担する場合に保険金が支払われます。主催者の過失による事故として、次のような例が考えられます。
(1)事前の点検注意を怠った場合
(2)適切な指導を怠った場合
(3)事故発生時の措置が充分でなかった場合

【てん補限度額】

一名につき7,000万円を限度とします。一事故につき五億円を限度とします。ただし、一事故につき免責金額(主催者負担額)を一万円とします。また、平成二年度からは、食中毒の場合の事故についても補償されることになりました。てん補限度額とは、それぞれ当該事故ごとの限度額であり、保険金支払いに際しては、指導者の過失割合等に応じた認定額が限度となります。保険期間中に二回以上事故が発生した場合にも、各々の事故について一名につき7,000万円、一事故について五億円がてん補限度額となります。ただし、食中毒に限り、一年間の限度額が五億円となります。

【支払われる保険金の種類】

1 損害賠償金法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害で、具体的には、

(1)死亡・後遺障害の場合は、逸失利益、慰謝料、死亡または後遺障害確定までの治療費、死亡した場合の葬儀料等が合算されて認定された額をいいます。

(2)傷害の場合は、治療費、通院交通費、慰謝料等が合算されて認定された額をいいます。

2 応急手当費用

事故発生後における応急手当、雑送、その他緊怠措置に要した費用

3 争訟費用

事故発生後に生じた訴訟、仲裁、和解等に要した費用。弁護士報酬費用も含み、勝訴、敗訴を問いません。ただし、事前の同意が必要です。

4 損害防止軽減費用

事故発生後に講じた、損害防止軽減措置のため必要、または有益と認められる費用。

5 保険会社への協力費用

保険会社が、直接被害者と折衝する必要を認めた場合、その際に主催者が要した費用。

※この保険は、あくまでも法律上の損害賠償責任を負担した主催者側の損害を補てんするものであり、見舞金制度ではありません。※ボーイスカウト活動中の事故については、指導者、育成者の一方的な過失によるものだけでなく、被害者にも過失のある場合があります。その場合には、被害者の過失の占める割合に応じて、損害賠償金の額が決定されます。

【保険金が支払われない場合】

ボーイスカウト活動中の事故に起因する場合であると間接であるとを問わず、左記の事由による損害賠償責任については、保険金の支払いは受けられません。

(1)主催者である指導者が自ら被った死傷事故に対する損害賠償責任。
(2)主催者側、またはスカウトの故意による事故に対する損害賠償責任。
(3)戦争、変乱、暴動、労働争議、騒擾による事故に対する損害賠償責任。
(4)地震、噴火、洪水、津波等の天災による事故に対する損害賠償責任。
(5)主催者側と被害者の間に、禎害賠償に開し特別の約求のある場合において、その約束によって加重された損害賠償責任。
(6)排水、または排気(煙を含む)による事故に対する損害賠償責任。
(7)自動車、航空機、エレベーター、エスカレーター、船等の所有、使用、管理に起因する事故に対する損害賠償責任。
(8)その他、「施設所有(管理)者特別約款」第2条に該当する事項。

【事故発生時の通知】

行事の主催者は、万一、賠償責任を負うおそれのある事故が発生したときは、直ちに電話等で事故通知をしてください。

1. 事故通知のルート主催者が団の場合は、まず地区組織へ通知し、通知を受けた地区組織は県連盟へ、同様に県連盟は日本連盟へと順次通知してください。この保険の幹事会社である大東京火災海上保険株式会社へは日本連盟から通知します。

2. 事故通知の内容

(1)団名
(2)主催者の氏名、住所、連結先(電話番号)
(3)事故発生日、時間
(4)事故発生場所
(5)被害者(負傷者)の氏名、年齢、学校(有識者の場合は職業)
(6)行事内容
(7)事故の発生状況、原因
(8)負傷の部位、程度
(9)治療の状況、入院、通院の病院名と連結先(電話番号)、担当医師名、治癒の見込み
(10)その他、参考事項※事故通知が遅れると、保険金が支払われない場合がありますので注意してください。

3. その後の措置事故通知を受けた保険会社は、事故発生場所を管轄するサービスセンター等を通じて事故に関する事項を調査します。※被害者との示談交渉にあたっては、日本連盟を通じ保険会社と充分に打ち合わせを行ってください。事前の相談なく示談した場合、保険金が支払われないことがありますので、注意してください。

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賠償責任保険 Q&A

Ql 日本連盟に登録している指導者であることが絶対要件なのでしょうか? 例えば、カブ隊の舎営に付き添いを依頼した保護者の責任で事故が起きたとき、保険の対象になるのでしょうか。

A 特約書§1−3
行事計画書には氏名を記載することが望まれますが、「臨時に保護者を指名する」と記載してあれば、特定しなくても差し支えありません。ただし、事故が起きてから、保護者が現場にいたという偶然性の高いものは認められません。

Q2 集合地から解敵地までが保険の対象となりますが、現地集合・解散の場合、隊として指導者が引率して、まとまって参加した場合でも、往復の区間は対象外となりますか。

A 特約書§3
大会等に参加するため、指定された集合地に集合したときから、解散地において解散するまでの間、指導者が引率している場合は対象となります。例えば、秋田のジャンボリーに参加するため、埼玉のスカウトが大宮駅に集合し、大宮駅で解散するケースでは、出発から帰着までの間、指導者が引率していれば保険の対象となります。スカウトの自宅〜駅は対象外です。

Q3 「野外活動計画書」等を事前に提出していないと保険は支払われないそうですが・‥。

A 事実認定の問題です。事前の「行事計画書」の作成をお願いしております。スカウトが偶然集まって集合行動をとるとか、私的な集まりには適用されませんが、必ずしも事前の行事計画書の作成までは要求しません。

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